複雑な気持ちのまま、打ち合わせを終わらせ、ロビーを歩いていると、その足は、歩みを止めてしまった。

入口から、美男美女のカップルが、腕を組んで歩いてくる。

…なんで。

私は思わず顔をうつむかせた。

男は知ってる。…他の誰でもない。

私の婚約者。…鮫島秀吾だ。

秀吾の腕に細くて白い肌の腕を絡ませた女性は見た事は勿論ないが、洗練された絶世の美女と言っても過言ではない。

秀吾は、私に気づく事もなく、横を通り過ぎて行った。

私は無意識に手を握りしめていた。

好き、嫌い、苛立ち、辛い、悲しい…

いろんな感情が一気に流れ込んできて、息苦しい。

その場にいられなくなって俯いたまま、ロビーを早足に出て行く。

…と。案の定誰かにぶつかってしまった。