人間嫌いの小説家の嘘と本当


「やっぱり、お前面白いな」

「何が、面白いよ。私は本気で心配したのに」



喉を鳴らして笑う侑李に、少しムカついて反抗しようとしたけれど、回された腕の力が増して振り向くことも出来ない。



「あぁ、分かってる」



本当に分かってるのかな、この人。
面白がっているようにしか思えないんだけど。
肩口に顔を埋めているせいか、彼の息が首筋にかかって擽ったい。



「ちょっ、侑李くすぐったい。離れてってば」

「んー?」



惚けた返事だけして退いてくれる気配はない。
暫くその体制でいると、背後からコホンと乾いた咳払いと共に、冷ややかな櫻井さんの叱責の声が響いた。



「お二人とも、何をされているんですか」

「いや、これは違――」