人間嫌いの小説家の嘘と本当


嘘でしょ……小説の為――あの仕事部屋の散乱も、コレも全部……。
良かったと思う反面、彼に対して怒りが湧いてくる。



「事前に知らせてくれれば良かったのに……」

「そんな事したら、意味ないだろ」



呆れたように言い返す侑李。
確かに、彼の言っている意味は分かる。

事前に知っていれば、こんなにもハラハラすることも無かっただろうし、もう少し早く帰っていれば、なんて後悔もしなかった。

だけど――。

奥歯を噛みしめ、怒りとも悲しみとも言いようのない気持ちを抱え込む。
その代わり、眼頭がジワリと熱くなり視界がぼやけてきた。



「……着替えてくる」



彼に顔を見せたくなくて、俯きがちにそう言って立ち上がると部屋のドアへと向かった。