薄暗い部屋の中。
立ったまま考える人のような侑李の姿が視界に入る。
右手に添えられている左手には、私を襲ったスタンガン。
侑李以外は……誰もいない。
「ぁれ……敵は?」
確認のために、そう聞いた。
「居る訳ないだろ。ここを何処だと思ってるんだよ」
侑李は当たり前だろ、と言わんばかりに呆れたような顔をする。
じゃぁ、やっぱりさっき私に襲い掛かってきたのは――侑李本人?
一気に全身の力が抜けたように、その場に崩れ落ちた。
いや、だって……じゃ、仕事場のあの有様は何だったの?
「何のために、こんなこと――」
「今書いてる作品で、ちょっとな。なかなかの迫真の演技だったぞ」
茫然としている私を他所に、侑李は機嫌が良さそうに薄く微笑んだ。

