人間嫌いの小説家の嘘と本当


いきなり襲って来たら、どうしよう。

今までも何度か侑李を襲ってきた奴らを、返り討ちに出来てはいたけれど、今思えば単に運が良かっただけなような気がする。

黒帯で段を持っていても、あくまでも素手と素手の試合という公の場でのこと。
こんな実戦的ではないしボディガードとしては素人だ。

今だって侑李のことは心配だけど、逃げ出したいくらい怖い。

ゴクリと生唾を飲み込んで、足音を立てないように一歩一歩慎重に足を進めていく。
けれど、この部屋の中には人が息を潜めている気配は感じられない。

残るはこの先にある、彼の寝室だけ。

中の人物に気付かれないように、そっと近づきドアに聞き耳を立てた。
微かにだけれど、カサカサと何かを探しているような物音が聞こえる。

やっぱり犯人は、まだこの中にいるんだ。


侑李、どうか無事でいて――。