人間嫌いの小説家の嘘と本当


侑李って、見掛けによらず甘い物が大好きなんだよね。

頭を使うから糖分が必要なだけだ、とかなんとか言ってるけど甘いものを口にしている時は、ふっと頬が緩んでる。
あれは絶対嬉しい時の顔だ。

そうだ。折角、街に来たんだし侑李に買って帰ろう。
自然と笑みが零れて、さっきとは打って変わって足取りが軽くなった。



「わぁ~美味しそう。あ、抹茶クリームが出てる」



ここの店舗のシュークリームは、皮がサクサクで中のクリームがふわっと軽いのに、しっとりとしていて甘さも控えめ。
いくらでも食べれるくらいだと男女問わず人気。



「こちら、期間限定なんですよ?」



にっこり営業スマイルの店員のお姉さん。
期間限定……一番、女性が弱いキーワード。
しかも抹茶って……もう、買わないわけにはいきません。

別に誘惑に負けたわけじゃない。
元々、買うつもりだったしね。

自分に言い訳をしつつ、いつもお世話になっている櫻井さんの分も買って帰路に急いだ。
侑李たち、喜んでくれるといいなぁ。