人間嫌いの小説家の嘘と本当


初夏を思わせる明るい日差しが降り注ぐ中、私はいろいろなお店の前で足を止めながら、ウィンドウショッピングをしていた。

街の様子も春物から夏物へと変わり、見るもの全てが新鮮。

だけど楽しいはずなのに、何故だか心にぽっかり穴があいたみたいに物足りない。
どうして……何が足りないの?


自分でも良く分からなくて首を傾げていると、不意にあるコーヒー専門店で視線が止まった。

季節ごとに新しいフレーバーが出て、その度に行列ができる程の人気店。
私も真幸と付き合っていた時には、よく行っていた。

同時の事を思い出して、心の奥がジクジクと痛む。
ダメダメダメ。忘れなきゃ。
両頬をパンっと叩き、自分に喝をいれて再び歩き出す。

けれどショッピングとういう気にもなれず、そのままバス停へと方向転換。
途中、何処からともなく甘い匂いが漂ってきて足を止めた。

この匂いって……。

甘い香りに誘われるように足をすすめると思った通り、視線の先には有名なシュークリームの専門店の看板が目に入った。