人間嫌いの小説家の嘘と本当


侑李の前でチュールスカートを広げ、一回転をして見せる。



「ふ~ん。まぁまぁだな」



興味無さそうに答えるとパソコンに向かい、いつもと同じように忙しなく指を動かし始めた。

若干、不貞腐れているように見えたのは……気のせい、かな。
ま、いいや。有栖川さんから資料貰ったら、少し街をぶらぶらしよう。

意気揚々と白鳳家を出て街に向かって歩きだす。
普段は、侑李か櫻井さんが運転する車で街に出ることはあっても、一人で出掛けることが無かった、この一ヶ月。
なんだか解放されたみたいで、見るもの全てが新鮮に思えた。

鼻歌を歌いながら、近くのバス停へ。

小一時間バスに揺られながら、有栖川さんが勤める出版社の近くのバス停で降り、そこから徒歩五分。
三十階建てのビルの中に入り、受付で有栖川さんを呼び出してもらった。



「蒼井さん。すみません、わざわざお越しいただいて」



腰を低く、謝りながら現れた有栖川さん。
そんな彼に笑顔で応えた。