人間嫌いの小説家の嘘と本当


侑李に文句を言われない内に、自室へ戻りクローゼットを開けた。

有栖川さんの会社は、街の中にある。
さすがに普段の黒のスーツじゃ、新入社員と間違われるかもしれないし、多少はおしゃれをしていきたい。

クローゼットの中から、淡いミントカラーのミモレ丈のチュールスカートとシンプルな黒のトップスを選択して鏡の前で合わせる。
パンプスは、ネックベルト付きのオフホワイトをチョイス。

普段黒のパンツスーツを着ているせいか、外に行くとなると羽を伸ばしたくなる。
ウキウキしながら袖を通し、鏡の前で最終チェック。

このクローゼットの中に入っているものは、全てココに来た初日に侑李と一緒に買いに行ったものばかり。

センスが良いというか、一見私には似合わないと思ったものでも、実際に袖を通して鏡の前に立てば、意外と似合っていたりする。

ブランドもので、生地が良いって言うのもあるのかもしれないけど、やっぱり美的センスが高いという事だと思う。

ん。まぁ、こんなものでしょう。
私はクローゼットを閉め部屋を出た。
すると何故かドアの前で待っていた侑李と目が合う。



「……着替えたのか」

「そ。どう、似合うかな」