「でも、今日の先生をみて少しホッとしました」

「どうしてですか?」



私は今の侑李の姿しか知らないから、今までの彼を知らない。
今と昔では、何かが違うのだろうか。



「あなたには、心を許しているように見えたんです」



有栖川さんは二階の部屋にいる侑李を見詰めるように、少し上を見ながらそう言うけれど、私は素直に喜べないでいた。
だって……人として見てくれていないような気がするから。

単なる、捨て猫を拾った飼い主のような?
私の扱いは、そんな感じだ。



「蒼井さん。これからも先生の事、よろしくお願いします」



嬉しそうに笑みを浮かべて、有栖川さんは玄関を出ていった。
よろしくって言われても、どうしたもんか。
まぁ考えてもしょうがないし、小説の続き読もうっと。

私は有栖川さんの言葉を、深く考えることなく、二階へと続く階段を、軽い足取りで登って行った。