翌年には、その作品が新人賞を獲り、次回作は直川賞にノミネートされ見事受賞。

侑李の作品は、必ずしもハッピーエンドで終わるものばかりではないけれど、読み終わった後、放心状態になるほど物語に引き込まれる。

そういった作風が読者の心を掴み、どんどん知名度を上げるものの、本人は一切メディアには顔を出さず、授賞式の場さえも出て来なかった。

外見やルックスを見れば、たいていの女性は放って置かないだろう。
事情を知った今だから言えるけれど、侑李の場合は表舞台に出れば命の危険が増すということ。

いつ侑李を狙う“敵”に遭遇するかもしれないし、メディアに出すなんてことは、難しいのは想像がつく。



「普段は、僕にすら会ってくれることは珍しいんですよ?電話や櫻井さんを通して、作品の話をすることが殆どですから」



人間嫌いとは聞いていたけれど、仕事上お世話になる人まで近づけないのか。

どうして、そこまで人を嫌いになるんだろう。
例え狙われる身だとしても、助けてくれる人は今までにも沢山いたはずだ。