まさか……そんな事があるはずがない。
私の尊敬して止まない憧れの人が、超わがまま自己中男だなんて――。



「嘘でしょ……本当に鳳白哉?」

「だから、さっきからそう言ってるだろ」



涼しい顔で答えると原稿の話か、二言三言有栖川さんと話を交わしている。
あぁ……私の理想が崩れていく。

鳳 白哉は、一切メディアには出ることは無く作品だけが世に出ている。
だから巷では、不細工だから表舞台に出ないんだとか、極度のあがり症なんだとか、さまざまな噂が飛び交っていた。

私も作風から、もっと大人でダンディな四十代の男性なんだろうと勝手に想像していた。

だけど事実は、奇病に侵され自分の体を狙われるデンジャラスな男だとは、誰も想像できるはずがない。



「い~やぁ!!!」



ムンクの叫びの如く頬を両手で覆い叫ぶ。
有栖川さんは、何が起きたのかと目を瞬き、その横で侑李は、呆れたような溜息をついて「煩い」と一喝した。