うっそ。寝てたんじゃないの?
だいたい、俺のファンって意味わかんない。

声の主は私の横を、欠伸をしながら素通りすると、テーブルに置いてあった封筒を有栖川さんへ手渡した。



「何言ってるの。私は鳳白哉のファンであって、あなたのファンじゃないわ」



いくら自分が目立つ存在で、カッコいいからって自惚れるのも程がある。
自意識過剰なんじゃないの。



「だからソレ。俺の本なんだけど?」



机の横に置いてある、ワインクーラーのような小型の冷蔵庫から、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、一口含む。



「先生。今回も最高です。本当にありがとうございます」



編集者の有栖川さんが、深々と侑李に頭を下げる。
侑李がソレと言って指さしたのは、私が抱えている本。
交互に視線を行き来して、ある結論に達した。