「何処に電話するつもりだ?」
「どこって、警察だけど?」
当たり前でしょ?私達、襲われたのに何もしないなんて、これからも襲ってくださいって、言っているもんじゃない。
「無駄だ。それに――」
呆れたように溜息をついた後、顎で彼らがいた場所を指し示す。
しかし、そこにはうめき声をあげながら倒れていた彼らの姿はなく、痕跡だけが残っていた。
逃げた……それにしたって、犯人をこのままにしていいはずがない。
人は居なくても、捕まえるための跡は沢山残っている。
「でも、このままじゃまた――」
「警察も信用出来ない。それに、また襲われたらお前が守ってくれるんだろ?」
侑李は、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。
だけど何故だろう。私には、その時彼が泣いているように見えた。
だから――。
「もちろん。だって、私は侑李専属のボディーガードなんでしょ」

