人間嫌いの小説家の嘘と本当


「その顔は、思い出したようだな」



侑李は、ニヤリと口角を上げて私を見詰めてくる。
確かに思い出した。だけど、それ以降の記憶が無い。
そのあと何があったのか――。

私と侑李がひとつのベッドで寝ていた理由が、今のところ見たらない。
やっぱり、そのあとお酒の勢いでヤッてしまったんだろうか。



「どうかしたのか?」



鼻の先まで近づき、私の顔を覗き込んできた。
ワザとなの?それとも天然?どちらにしても、心臓に悪い。



「ち、近い!!」



彼の胸を押しながら距離をとる。
すると不服そうに口元をへの字にして「ふ~ん。ま、いいけど」と呟いて立ち上がった。

そしてスマホを取り出すと、どこかに電話をし始める侑李。

あ、そうだ。警察に電話して、この人たちを捕まえてもらわなきゃ。
彼らをこのままにしておくわけにはいかない。

私もスマホを取り出して操作していると、スマホの画面を覆いかぶすように細長い指が重なった。