人間嫌いの小説家の嘘と本当


聞きなれない言葉に、目を瞬かせる。
そんな私には気にも留めずに、彼は話を続けた。



『古い言い伝えでね。アルビノの体の一部を手に入れれば幸せになれるらしい』



自嘲的な笑みを浮かべて、空を見上げる。
彼の視線の先を追うように私も空を見上げると、ついさっきまで雨が降っていたのが嘘のように、空には沢山の星がキラキラと瞬いていた。



『そんなの迷信でしょ』

『残念だけど、それを信じている人が大勢いる。それが現実さ』



先天性疾患ってことは、髪が白いのも肌が透けるように白いのも、自分では、どうにもできない病気ということだ。

なのに、そんな人の体の一部を手に入れて幸せになろうだなんて、残酷非道なことがあっていいものなんだろうか。



『じゃ、私が守ってあげる』



決して軽い気持ちで言った訳じゃない。
ただ理不尽に体の一部を狙われて、ゆっくりお酒さえ飲めないなんて哀しいと思ったからだ。