グッと腰を落として、相手の出方を見極める。
そして、ひとりは膝蹴り。もうひとりは、右左と攻撃をかわしながら最後には回し蹴りで決着をつけた。
あぁ、もう。折角買って貰った靴が台無し。
ヒールが折れちゃったじゃない。
「蒼井、後ろ!」
侑李の声が聞え、振り返ればキラリと光るものが目に入る。
っ、ナイフ?凶器を使うなんて卑怯な!!
ヒールが折れたパンプスを脱ぎ、敵に投げつける。
それに怯んだ隙に、思い切り蹴り上げナイフが宙を舞った。
みぞおちに一発拳をお見舞いすると、呻きを上げてその場に倒れ込む。
「ヒュ~、さすが黒帯」
手についた汚れを払うために両手を叩いていると、後ろから呑気な声と共に口笛が飛んできた。
何が黒帯よ。今のは全く関係ないじゃない。
「侑李。あなたねぇ、まるで他人事じゃない」

