人間嫌いの小説家の嘘と本当


周囲に気を張っていると、クスクス笑い楽しそうな声が聞えた。
驚きそちらをみると、ニッと片方だけ口角を上げた侑李の顔が映る。

嘘でしょ。あまりにも呑気すぎない?
今までにも同じようなことがあったとか……というか、いま相変わらずっていったよね?



「もしかして前にも、こういう事あった?」

「さぁね」



そういう侑李は、少し楽しそうだ。

ムカつく。彼が知っていて私が知らない、いや思い出せない“何か”。
もう少しで思い出せそうなんだけど……あぁ、もうじれったい。

彼が選んでくれた服が、パンツで良かった。
これなら蹴りも出来るし、自由に動き回れる。
汚れてまうのが、残念だけど。破けないように気を付けなきゃ。
少し前まで、空手を習っていた甲斐があるっていうものだ。



「うおぉぉぉぉ!!」



雄叫びを上げながら、突進してくる男。
しかも左右両方から。女一人に男が二人でだなんて、ズルくない?!
だけど相手もケモノのように死にもの狂い。そんなこと言ってる場合じゃないか。