余りの表情の無さに、本当に人間か疑いたくなってきたころ、最後に行き着いたのは、ある美容室。
しかも予約必須、完全個室。
確か、芸能人御用達だとも言われている有名なところだ。

いつの間に予約を……。
いろいろ問質したいところではあるけれど、ココまでのやり取りを思い出し、何を聞いても「煩い」で一喝されてしまう為無駄だと学習済み。

それに太陽は天辺に昇りつめサンサンと輝きを増している。
朝食も食べていないし、お腹が空きすぎて何を言われても反論する気になれない。



「こいつを頭から爪先まで、綺麗にしてやって」



店に入るなり、一人の男性美容師に声を掛け、そう言い残して侑李は美容室から出て行こうとした。



「え、侑李は?どこかに行っちゃうの」

「直ぐに戻ってくる」



フッと、口角を右側だけを少し上げて笑みを浮かべると彼は美容室を出て行ってしまった。

わ、笑った?始めて見たかも……。
なんだか、貴重な瞬間を見た気がして嬉しくなってしまう。