人間嫌いの小説家の嘘と本当


嬉しそうに、私の左薬指に嵌められた指輪にキスを落とす。

“奥さん”と言う言葉に恥ずかしさを覚え、赤面するものの、“ガニ股”は余計じゃないかなと心の中で抗議する。

そのまま私は侑李に支えられ病院を出ると、櫻井さんが玄関前に、手入れの行き届いた黒色の車を用意して待っていた。

侑李の外車では無いから、恐らくは櫻井さんの使用車だと思われる。
国産ではあるが、王冠のエンブレムが付いたそこそこお値段の張る高級車。

私達が車に近づくと、櫻井さんは後部座席のドアを開け二人が乗り込んだのを確認して、静かに閉じる。

なんてスマートで行き届いた所作。
その後も、櫻井さんの運転は安全で静かで快適だった。



「ようやく、収まるべきところにおさまったようですね」



バックミラーで私達を見ながら嬉しそうに微笑む。
彼の視線の先には、車内でも繋いだままの私達の手に注がれていた。