人間嫌いの小説家の嘘と本当


忘れ物がないかと辺りを見渡して、応接セットのテーブルに置かれた、ベルベット調の小箱に目が止まる。

昨日、侑李が見せてくれた婚約指輪だ。
私はそれを手にし開いた。

太陽の光に当たってキラキラと輝くダイヤモンド。
小箱から指輪を引き抜き、左の薬指にそっと嵌めた。

ひんやりとした感触が身を引き締めると同時に愛しさが湧き出す。



「よし、行こう」



私は荷物を手に病室のドアを開く。
すると、向かい側の壁に背を預けるようにして侑李が待っていてくれた。



「荷物、持ってやるよ」



そう言いながら、伸ばす左手。
私は「ありがとう」と素直に荷物を差し出した。

すると私の手ごと引き、すっぽり侑李の体に包まれる。
そして、彼の右手が私の腰に当てられた。

全てが一瞬の出来事で抵抗すら出来なかった。



「ガニ股になってる。支えてやるよ、奥さん」