彼の言葉にふと疑問が湧き小首を傾げる。
「え。私も、ですか?」
荷物を纏めるって、退院していいってこと?
蓮見先生からは特に何も聞いていないけど、大丈夫なのかな。
「蒼井様。別に残っていただいても構いませんよ。あられもない声を病院内に響かせ、淫乱な入院患者と噂され平気ならばね」
そう言いながら振り返った櫻井さんの背には、どす黒いオーラが見え、恐ろしい程の笑みを浮かべていた。
その表情と言葉に、サーッと血の気が引いていくのが分かる。
確かに個室だと言っても、防音ではないのだから声が漏れないとは限らない。
昨日の夜は、ここが病院だと言うことをすっかり忘れてお互いを求めあっていた。
声が出ない様に抑えていたとしても、出していない訳じゃない。
今更になって恥ずかしさが込み上げてくる。
「分かったなら、さっさと動く!」