「行ってきます。あ、ミルクティーご馳走様でした」
目頭に浮かんだ涙を拭い、私は一歩前に踏み出す。
私の気持ちをちゃんと伝えて話し合おう。
何を考えているのか。何を思っているのか、侑李の素直な気持ちを聞きたい。
「いってらっしゃいませ……侑李様は、Crimson Birdへ行かれたようですよ」
櫻井さんの声を背に受けながら、先に出た侑李の後を急いで追い掛ける。
Crimson Birdへは、いつも車で行く侑李に追いつくには結構至難の業だ。
私は免許を持っている訳でもないし、都合よく近くにタクシーなんて止まっている訳もない。
丁度いいバスの時間があればいいけれど――。
急いで停留所へ向かうと、ちょうど市街地へ向かうバスが止まっていた。
もう少しで発車しそうなバスに飛び乗り、空いていた席に座る。
窓の外に流れるネオンを何気に見ながら赤信号で止まるたび、早く早くとソワソワしていた。
カラン、カラン……。
軽いベルの音が店内に鳴り響く。
私を見つけ「スズちゃん久しぶりだね」と柔らかい笑みを浮かべ出迎えてくれるマスター。
けれど座ることなく店内を見渡し、来たはずの侑李の姿を探す。
まだ開店して間もないからか、店内には誰もいない。
あれ?まだ来てないのかな――。

