人間嫌いの小説家の嘘と本当


始めは、何故こんな人があんなにも素敵な小説が書けるのかと不思議でならなかった。
だけど彼を知るにつれて、もっと知りたいって思った。

最初はそれが興味本位だったとしても、今では違う感情が私を突き動かしている。



「私、侑李の笑顔がもっと見てみたいんです。彼の幸せが私の幸せ。好きって言葉だけじゃ伝えられない程に、彼の全てを愛してます」



自分の胸に手を当て、心からの言葉を口にした。
これだけは間違わない。
どんなことがあっても、私は心から彼を愛している。



「それを聞いて安心致しました。その言葉を、侑李様にお伝えください。きっと応えてくれるはずですから」



櫻井さんの言葉が、浸透するように心に沁み込んでくる。

そう言えば私、侑李に“好き”って言ってない。
彼の心が分からないって言う前に、言わなきゃいけないことがある。



「私、侑李を追いかけてきます」

「それでこそ、蒼井様です」



櫻井さんは、ニコニコと温かな眼差しで私を見詰め返してくれた。
もしかしたら父親って、こんな感じなのかもしれない。
亡き父親の姿を櫻井さんに重ね、嬉しくなる。