突き放した言葉にも、彼なりの優しさが垣間見える。
長年侑李に仕えてきた櫻井さんだからこそ言える言葉なのだろう。
私だって信じたい。でも侑李が分からない。
だから不安になる。
本当に侑李は私のことが好きなのかと――。
「あなたは、侑李様の事をお慕いしていますか?」
え、お慕い……?
あぁ、好きかどうかって事か。
彼の言葉が分からなくて一瞬戸惑ってしまった。
けれど櫻井さんの顔は真剣そのもので、冗談で聞いているのでは無いと分かる。
「え……それは、もちろん好きだけど」
「それは鳳白哉という作家をですか?それとも白鳳侑李という人間をですか?」
この言葉で、ようやく彼の意図が分かった。
元々私は、作家である鳳白哉のファンだ。
だからこそ櫻井さんは私を試しているのだと。
人間として、そしてひとりの男として侑李の事が好きなのかと――。
「私は……どちらも好きです。だって鳳白哉も白鳳侑李も、どちらも侑李なんです。分けて考えることなんて出来ません」

