身構えていると思いもよらない言葉が飛んできて目を瞬かせた。
たぬき?一瞬、誰のことか分からなかったけれど
さっき私が話していたのは、蓮見先生だけだ。
アニメなんかで出てくるお腹の出た狸の姿と、蓮見先生が脳内で合体する。
「ぷっ……」
思わず吹き出してしまい、慌てて咳をして取り繕う。
「血相を変えて、私を病院に連れて行ってくれたのは侑李だって聞いた」
嘘じゃない。櫻井さんからも、私が死んじゃうんじゃないかって、大慌てだったって聞いてる。
「あのタヌキじじぃ、余計なことを……それだけか?」
苦虫を潰したように顔を顰め、毒を吐く侑李。
「ん~。あと、幼い頃は周りに気を遣って過ごしてたって」
家族とは容姿の違う自分を抑え込み、周りに迷惑が掛らないように子供心に気を付けていた。
それがどんなに辛い事か……私には計り知れない。
そんな彼をそばで見ていた家族も、どんな気持ちだったんだろう。