コンコン……。
控えめにノックする音。



「蒼井様。私が代わりますので、お食事をお召し上がりください」



静かにドアが開き、櫻井さんが顔を出す。
普段なら、下のダイニングで食事をとるのだけれど、侑李から離れたくないと我儘を言って、隣の部屋に運んでくれているのだ。



「ありがとうございます」



櫻井さんにお礼伝えて入れ違いに部屋を出る。
テーブルに用意された、出来立ての炒飯とスープ。

櫻井さんは私が包帯が取れてない両手では、まだお箸で食べることが出来ないから、スプーンやフォークで食べれる物を、いつも用意してくれている。

温かくて美味しいはずなのに、ひとりだと味気なくて、不思議と食欲が湧かない。
一口二口と口に運び、半分も食べないうちにスプーンを置いた。



「……寂しい」



いつからこんなにも、ひとりがダメになったんだろう。
昔は、ひとりでも平気だったのに――。