人間嫌いの小説家の嘘と本当


ジャリ、ジャリと一歩ずつ近づいてくる足音。

そんな私達三人を囲むように、殺気を抑えた男たちは静かに見守っている。
目の前にきた執事をジッと静かに向き合う侑李。

執事は、彼の手を取ると思いきや顔の方へと手を伸ばし――。

嘘、まさか目を取るの?
月のような淡青色をした瞳。
象徴的で綺麗な瞳だけど、見えなくなったらそれこそ小説どころじゃなくなってしまう。

身体を支えるために右手に持っていたライフル銃を放し、両手で侑李の体を後ろから抱きしめる。
カシャンと乾いた音を鳴らし、銃が地面に落ちると同時に、今後の彼の姿を想像して思わず目を閉じ叫ぶ。



「だ、ダメ―!」



次の瞬間、ジャキンと音が聞こえ「あ゛?」と間抜けな侑李の声がした。

恐る恐る開ける侑李の左脇から覗き込むように見ると、左手に白銀に光る束と右手にハサミを持った執事と目が合う。

侑李の顔を見上げれば、驚いたように目を瞬かせフリーズしている彼の姿。

え、何……何が起きたの?