人間嫌いの小説家の嘘と本当


え――?
一瞬、彼の言葉が理解できなくて目を瞬かせる。



「……何を言ってるの?手なんてダメだよ。小説が書けなくなるでしょ」



違う。私が言いたいのはそんな事じゃなくて――。
彼の腕を引き本意を聞き出そうとするけれど、振り向いた彼の顔は、とても優しい顔をしていて、これ以上何も言えなくなってしまった。



「ただし、条件がある。今後一切、コイツには手出ししないでくれ」



もしかして、私を守るためにこんな無謀なことを言い出したの?
彼の言葉にハッとし、顔を上げる。

そんなの意味ないよ。私は侑李を守るためにいるのに。
それなのに私のために、自分の一番大切なものを差し出すなんて――。



「嫌だよ、こんなの良くないよ」

「良いんだよ。お前が無事に帰れるなら、それで――」



優しい声音と共に、大きな手が頭の上に乗せられる。

声だけじゃない。頭に乗せられた手も、もの凄く優しくて何もできない自分が情けなくて、涙が浮かんできた。