人間嫌いの小説家の嘘と本当


「おい、聞いているのか?蒼井?」



大人しすぎる私を不思議に思ったのか、両肩を掴み顔を覗き込んでくる。

額には汗が浮かび、白い肌にはいくつもの擦り傷か見える。
その傷に触れるように、私は彼の顔に手を伸ばした。



「ありがとう。すごく会いたかった」



意識が混濁しているのか、普段なら言わない言葉が口を注いで出てしまう。
でも嘘じゃない。心からの言葉だ。



「お前、やっぱり変だ。頭打った……ん?何だこの傷」



後頭部に手を回した時に、私の傷に気付いたようだ。
頭の傷跡を優しく、それでいて躊躇うように触れてくる。



「ココに来た時に、ちょっとね」



侑李の温もりにまだ浸りたかった私は、説明するも面倒くさくて言葉を濁した。

するとそれを聞いた侑李は、おおよそ察したのか「くそっ、アイツら」と低く呟き、肩を掴んでいた手に力がこもる。