人間嫌いの小説家の嘘と本当


これじゃ、ボディーガード失格だな。
自傷的な笑みが零れた瞬間、声と共に誰かに抱きしめられた。



「蒼井!!」



懐かしく、それでいて愛しい人の匂いが私を包む。
汗と血と埃で、汚れているけれど間違いない。



「……侑李、大丈夫だった?」



私は、彼の背中に左手を伸ばし片手で抱きしめ返す。
彼の顔はよく見えないけれど、どことなく泣いているような気がした。



「侑李、怪我が痛」

「バカかお前は。無茶ばかりしやがって。何なんだよ今の。不死身にでもなったつもりなのか」



私の言葉は、侑李に遮られ最後まで言えなかった。
けれど彼の気持ちが、濁流の様に流れ込んできて涙が込み上げてくる。

ゴメンね、心配させて。
でも良かった。生きていてくれた――。

私は彼の胸に顔を埋め、トクントクンと波打つ鼓動に耳を澄ました。