人間嫌いの小説家の嘘と本当


背中越しに聞こえる彼の声。
顔は見れなかったけど、ひどく懐かしい気持ちがした。



「ありがと」

「ふっ。俺がこんな事に巻き込んだのに、それでもお前は礼を言うんだな」



苦笑しながら「相変わらず、お人好しだな」と一言付け加えた。
その一言は余計だけど――。



「それとこれとは……別って言うか」



振り返り慌てて言い返そうとしたけれど、言葉が見つからなくて言い淀む。

ふんわりとした温かな雰囲気に、以前の恋人同士だった頃を思い出す。
そのせいか、さっきまでの警戒心が緩み始めるのを感じていた。



「喉乾いてないか?」

「……少し」



強がってみたものの埃まみれだし、正直なところ頭から被りたいくらい水が欲しい。



「水、持って来たんだ。飲ませてやるよ」