人間嫌いの小説家の嘘と本当


私は狭いソファの上で体勢を変え腰を折り、何とか上半身だけ起き上がった。



「そんなの間違ってる。主人が間違いを起こそうとしてるなら、身を呈してでも正しい方向へ導くのが執事じゃないの?」



少なからず私の知っている執事はそうだ。
櫻井さんなら侑李が間違いを起こそうとしていたら、きっと止めに入る。

主人のいいなりになっているのが正しいなんて、そんなの奴隷と一緒じゃない。



「君に何が分かるんだ。僕はあの方に拾われた。あの方が居なければ、今頃僕は死んでいたかもしれないんだ。だから、あの方が望めば僕はなんだってやる」



彼の言葉に自分を重ねる。
この人も、あの時の私と一緒だったのかもしれない。

何処に行くことも出来ず、自分を責め途方に暮れていたあの日。
泣き喚いても誰にも届かない。
私も侑李に出会っていなけば、どうなっていたか。


彼の気持ちも分からなくはない。
だけど悪いことだと分かっていて注意しない方も、それを部下に望んでしまう主人も、私には理解できない。