そもそも、その時選んだ選択が正しいなんて誰が分かる?
後になって、ああしておけばって後悔をするのは自分自身だ。

すべてが『たられば』の世界。
それならば、過去を振り返るより未来を見た方が何倍もいい。

そう考えるようになったのは、侑李の……鳳 白哉の影響と言える。

侑李の書く小説の主人公たちは、様々な壁を前にして時には挫折を味わいながらも、いつも前を向いて歩いて行く。

そんな主人公たちに憧れた。それと同時に、この小説を書く作者にも興味を覚えた。
始めは興味半分。だけど気付けば、どっぷりハマっててファンになっていた。

今どき、メディアに顔を出さない作家は珍しい。
想像を掻き立て、どんなに素敵な方なんだろうと思っていた頃を懐かしく思う。

まぁ現実は小説よりも厳しくって、自分が思い描くようには進まないんだけど、それでも後悔ばかりせず前を向いていけたらと私は思っている。

あぁ……こうやって、汗をかくのはやっぱり気持ちがいい。
思い切り、朝の空気を吸い込んで深呼吸をした。



「ちょっ……待っ」



この人さえいなければ、もっと気分が良いのに――。