愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

「あ……」

そこにいたのは、ママだった。



「あ、かお姉…
あ、あの、この子が道がわからなくて困ってたんで…」

「そ、そうなんです。
それで、教えてあげてたんです。」

「あら、そうだったの?」

今の雰囲気じゃ、本当のことなんて言えるはずもない。
私は、ひきつりながらも笑顔を浮かべて頷いた。



「いい?駅はこの先をまっすぐ行って右だからね。」

私に声をかけた人が、そんなことを言うもんだから、私は仕方なく「ありがとうございました。」と頭を下げた。



「じゃあ、かお姉…私達はこれで……」

そう言い残し、女の子達は、そそくさとその場を離れて行った。



「望結…今の子達になにか言われたの?」

「えっ!?」



どうしよう。
話したい気持ちはあるけど、本当のことを言ったら、ママは絶対心配するよね。
瑠威にも言うだろうし、そしたら当然瑠威も心配する。
それで、もしも、ライブに行けなくなったりしたらそれは困るよねぇ。



「望結?」

「ううん、そうじゃないの。
わ、私…駅がどっちだったか、ちょっとわからなくなって…それで、教えてもらってたの。」

「……本当に?」

「え?もちろん本当だよ。」

私は無理して作り笑顔を浮かべた。