愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

「みんなーー!俺たちのこと、忘れてなかったかーーー!」

瑠威の声に、客席からはうねるような大歓声がわきあがった。



「ほかのバンドに浮気してなかったかーーー!」

「してなーい!」

みんな、最初から返事を決めてたみたいに、観客の声が揃った。



「みんなに会うのが待ちきれなくて、今日、出てきちゃったぜ!」

耳が痛くなるほどの歓声。
キラさんやハルさんは、もう顔が涙でぐしゃぐしゃだ。



こんなにもたくさんの人に愛されてるんだね…シュバルツは…
そう思うと、そんな瑠威が、義理とはいえ私のパパだってことがなんだかとっても誇らしく思えた。



考えてみれば、こんなにもたくさんのファンがいる瑠威に愛されたママもすごい。
出会いって本当に不思議だよね…
ママのお店にたまたまオルガさんが来なかったら、シュバルツの存在さえ知ることはなかっただろう。
ママは音楽はまぁ好きだけど、ヴィジュアル系なんて聞いたことなかったもん。
そんなママと瑠威が知り合って、そしてお互いにひかれあって…
いろんな障害を乗り越えて結婚して…



考えれば考える程、なんだかそのことが奇跡みたいに感じてしまう。



でも、私にはそんな奇跡みたいな出会いはないだろうな、きっと。
せいぜい、職場で出会うか…まだ行ったことはないけど、合コンとか?
お相手もきっと普通の人だよね。
どこにでもいるような…ごく普通の…
だって、私がこんなに平凡なんだもん。



そう…この煌びやかな世界は夢の世界。
すぐ近くに感じられても、本当は手が届かない異空間…



(わっっ!)



そんなことを考えながら、ふと、顔を上げたら、すぐ前に瑠威がいた。
私と目が合い、片目を瞑る。
その時、前の席の人とキラさんやハルさん、さゆみまでが甲高い声を上げた。
みんな「私にウィンクした」って思ってるんだよね。
実際、私にウィンクしたんじゃないかもしれない。
勘違いだったかも…恥ずかしい…