愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

女子トイレはすごく混んでた。
並んでる間に、またさゆみがさっきみたいな話をしないかと心配したけど、さすがにそんなことはなかった。
鏡の前も満員だ。
みんな、真剣な顔で化粧直しをしている。



そうだよね…
この中には、さゆみと同じようなことを考えてる子達がいっぱいいるんだ。
でも、それも当たり前のことなのかもしれない。
アイドルだって、バンドマンだって、好きな人には違いないもん。
自分のことを覚えてもらいたい、気に入ってもらいたい、出来ることなら彼女さんになりたいっていうのは、きっと普通のことなんだよね。



で……
そういうファンの心理を利用して(?)手を出してしまうバンドマンも多いってことなんだね。
だから、瑠威は絶対にバンドマンを好きになっちゃいけないって言ったんだと思う。
私に限ってはそんな心配はいらないのに。
バンドマンなんて私には永遠に手の届かない人だってわかってる。
ただライブが楽しいだけだもん。
せいぜい、握手してもらったり、一緒に写真を撮ってもらうだけで満足だもん。



(あ…やっぱり、てかてかだ。)



ちらっとのぞいた鏡に映った私の顔…
ヴィジュッ子のメイクをしても、まぁこんなもんだ。
私より綺麗な子や可愛い子は山ほどいる。



(私なんて、一次審査も通過出来ないよ…)



鏡の中の私に向かって苦笑した。