愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

「迷宮のサーカスへようこそ…」



ベースの朔也さんの決まり文句が妖しく響き、ステージが眩いライトで照らされ、激しいリズムが刻まれる…



「わぁ…!」



キースさんの言ってた通り、みんな新しい衣装だ。
今回のも、みんな良く似合っててとっても素敵!



でも…リクさんが着てたのは私達の作ったものじゃなかった。
そっか…あんなに気に入った風に言ってたのは、私達に気を遣ってくれただけだったんだ…
そう思ったら、ちょっと失望した。
さゆみもきっと同じ気持ちだろうな。
でも、仕方ないよね…
それに、私達はやるだけやったんだし。
気分を切り替えて、私は拳を振り上げた。

やっぱりCLOWNのライブは最高!
自然に体が動き出す。



(わ…)



リクさん、すぐに私に気付いたみたい。
それとも私の勘違いかな?
目が合って、リクさんが笑ったように思ったんだけど…
なんだか急に恥ずかしくなって、ステージを…リクさんを見るのをやめた。
俯いて、体の感じるままに跳び跳ねたり、手を振ったりしていたら…



「きゃあ!」



誰かにウィッグを引っ張られて、びっくりしたのと痛いのとで思わず声を上げてしまった。
その声にさゆみが振り向く。



以前、かつらがすっぽぬけたことがあったから、あれからはしっかり留めるようになった。
だから、かつらと一緒に地毛が強く引っ張られて…
そう…多分、誰かが故意に引っ張ったんだ…
さっきのさゆみと同じく、私を嫌ってる人の悪意…



「止めてくれ!」



リクさんの声で、演奏が中断された。
ホール内がにわかにざわめく。