愛しのカレはV(ヴィジュアル)系









「エミリーの予想通りだったね。」

三番目のバンドがロシアンだってことは、セットチェンジの時にはっきりした。
ロシアンのファンの子たちが、ステージの前に群がる。



「ハル、今、会社を出たって。
この分なら何とか間に合いそうだね。」

「会社からここまでどのくらいかかるんですか?」

「そうだね…30分くらいかな。」

「じゃあ、大丈夫そうですね!」


ロシアンのライブはノリノリで、けっこう楽しかった。
CLOWNとはほぼ同じ頃に活動を始めたバンドらしいけど、CLOWNとは違って、積極的にツアーにも出ているらしい。
CLOWNは地元中心だから、その分、地元では人気があるってことかな。







「ハルさん、来ませんね…」

「なにかあったのかなぁ…」

ロシアンのライブが終わり、セットチェンジが始まっても、ハルさんは来なかった。
荷物は、凌君が見ててくれるってことだったので、私達はステージの前に陣取った。



「私、リクさんに本気なんです~!」

真ん中あたりから声が上がった。
そして馬鹿にしたようなけたたましい笑い声。
それはもちろんさゆみに向かって発せられた悪意。



「……エミリー、気にするんじゃないよ。」

「はい、わかってます。」

きっと、シュバルツの打ち上げに来てた子達だね。
さゆみは、内心はどうかわからないけど、平気な顔をしていた。
肝が座ってるよ。



「キラー!」

「ハル!ここだよ!」

息を切らせたハルさんが、私達の所に駆け込んで来た。



「間に合って良かったね!」

「着替えてたら、一本、電車乗り遅れちゃって…焦ったよ。」

「あ、荷物、あそこのテーブルに置いとくと良いよ。
あの子が荷物みててくれるから。」

ハルさんが荷物を置きに行って、戻って来る途中で客電が落ち、CLOWNのSEが流れ始めた。