愛しのカレはV(ヴィジュアル)系





それからは葛藤の日々が続いた。



「あの…ね、さゆみ…」

「何?」



何度も何度も、あのことを話そうと思うのに、いざとなるとなかなか話せなくて…



「えっと…その…」

「どうかしたの?」

「あ、その…ラ、ランチどうする?」



こんな感じで、ついつい逃げてしまう…



それどころか、さゆみと顔を合わせるのさえ辛くなってしまって…
私は、仮病を使って講義をサボったり、バイトばかりに行って部活を避けた。



そんな日々を重ねる間にも、リクさんからのトークは届いてた。



『ヅラ子、返事はまだ?』

『そんなに早く決められません!』

『お前、堅苦しく考え過ぎてるんじゃない?
俺のことは嫌いじゃないって言ったよな?』



いっそ、嫌いだって言えば早いのかもしれない。
そしたら、リクさんももうこんなこと言って来ないだろうし。



なのに、なぜだかそう言えない。
だって…私、リクさんのこと、嫌いじゃないもん。
好きかどうか聞かれたら迷うんだけど、でも、嫌いかどうかって聞かれたら、嫌いじゃないってはっきり思える。



『嫌いではないです。』

『じゃあ、付き合おう!』

なんでこんなに簡単に言えるんだろう?
あ、そっか…リクさんは女の子に慣れてるから…
付き合うとかそういうのは、リクさんにとってもさほど重要なことじゃないんだ。
でも、私にとってはそうじゃない。
イメージしてたものともかなり違うよ。



たとえば、どこかで偶然出会って…
そう…何かで急いで走ってる時、曲がり角でぶつかるとか…
その時、相手の人がお財布とか落として、それがきっかけで知り合って…
何度か会ううちにお互いに相手のことを良いなぁ…って想うようになって、そして、ある時、告白されるんだ。
夜景を見ながらとか、海辺のレストランとかが良いかな?



「望結さん、僕と付き合って下さい。」


相手の人は少しはにかみながら、私にそう言うんだ。
で、私は俯いたまま、小さな声で「はい。」って返事をして…



普通、そういう感じじゃないの?
なのに、リクさん…ムードがなさすぎだよ。