愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

「望結…今日は何かあったの?」

夕飯を見て、ママが呟く…



「あはは……ちょっと帰るのが遅くなっちゃって…」

テーブルの上にはレトルトのカレーとサラダだけ。

リクさんがあんなこと言うから、帰ってからもしばらく立てなくて…
リビングのソファでぐったりしてた。
そんなわけで、夕飯の支度に取り掛かるのが遅くなっちゃって、こんなものしか出来なかったんだ。



「仕方ないな。」

「ごめんね!明日は頑張るから…」

「ま、たまにはレトルトも良いけどさ…
ところで、遅くなったってどうしたんだ?
何かあったのか?」

「え…」

何か言わなきゃ…もっともらしいこと…



「そ、それが…
で、電車の中でうとうとしてたら、知らないうちにずいぶん行きすぎちゃって…」

「何やってんだ?
おまえって、本当にどんくさいな。」

瑠威…リクさんと同じようなこと言って笑ってるし。



「し、仕方ないでしょ!眠かったんだから。」



本当のことは言えない。
だから、瑠威にどんな風に思われても仕方ない。



さっきよりはずいぶんましになったとはいえ、今日は精神的ダメージが大きすぎた。
カレーの味もサラダの味も、なんだかよくわからない。
帰ってきてからもずっとリクさんの言葉が頭から離れずぐるぐる回ってる。



『そっか。じゃあ、俺と付き合ってみない?』



思い出しただけでも、また顔が熱くなるし、身体がガタガタしてくる。




「望結…どうかしたの?
顔が赤いわよ。」

「か、カレーが辛くて!」

「馬鹿だな、早く、水、飲めよ。」

「う、うん。」

ごくごくと冷たい水を流し込む。
それでもまだ私の熱は冷めなかった。



リクさん…本気だって言ったよね…
でも、冷静に考えてみると、リクさんは私のことが『気になる』とは言ったけど、『好きだ』とは言ってない。
気になるから、付き合いたいって…
付き合って俺のことをもっと良く知ってほしいって…



これって、告白なんだろうか??
それとも、私の勘違い…?そんなことないよね?
一応はきっと告白だよね?
頭が混乱しててよくわからないけど。



それはともかく、もっと重要なことがある。
今日のことをさゆみに言うか言わないか…
難しいのはそこだよ。



もちろん、さゆみには隠し事はしたくない。
でも、こんなことを言ったら、さゆみは絶対に傷付くよね…しかも、私が傷付けることになる。

そんなのいやだよ。
さゆみを傷付けるなんて…

そうだよ。
第一、さゆみがリクさんを好きなことわかってて、リクさんと付き合うなんて、そんなこと、私に出来るわけがない。



なのに……私、どうして、すぐにそう言えなかったんだろう?
あの時、そう言えば、それですぐに話は済んだはずなのに…