愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

『からかわないで下さい!』

『からかってなんてない。
俺は、初めて会った時から、ヅラ子のことが気になってた。
しかも、会えば会うほど、気になって来てる。
だから、付き合いたい。』



えっと……



どうしたら良いんだろう?
まさか、リクさん…本気じゃないよね?
うん、相手はあのリクさんだよ…
格好良くて、ファンがいっぱいいるリクさんだよ。



そのリクさんが、私と付き合いたいなんて、そんなことあるはずない。
うん、そんなのありえない。



頭はわんわんするし、身体はがたがた震えて来るし…



からかわれてるのに、私、こんなに動揺して馬鹿みたい。



大丈夫。
きっとすぐに次のトークが来るよ。



『冗談だよ、ばーかって…』



そう思ったけど、なかなかトークは来なくて…



(あ、いけない!!)



降りなきゃいけないのに、ぼーっとしてた。
慌てて降りようとしたけど、無情にも扉は閉まって…



『リクさんの馬鹿。
リクさんがおかしなこと言うから、電車乗り過ごしちゃったじゃないですか。』

『おまえのそういうドジなところが、可愛いと思える。
俺、本気だからな。』



もうやめて!
顔が熱くて破裂しちゃうよ。
私はスマホのカバーを閉じた。



きっと、私は幻覚を見てるんだ。
冷静にならなきゃ…
とにかく、家に帰ってお風呂でも入ってゆっくりして…



次の駅に着いて、私は反対側のホームに移動した。



(落ち着け…落ち着くのよ、私…!)



自分に言い聞かせるように、何度もそんなことを心の中で呟いた。