愛しのカレはV(ヴィジュアル)系

女の子が二人、リクさん達のテーブルに向かって行った。
手にはCDを持っている。



「あの…リクさん…」

片方の女の子が、おどおどしながら声を掛けた時…大きな舌打ちが聞こえた。
女の子達はびっくりして、周りをきょろきょろする。



「あ~あ…今日は裏切り者が多いな。」



声の主には見覚えがあった。
こないだのイベントの帰り、私に声を掛けて来た人だ。



「今日は、シュバルツのライブだっていうのに、ほかのバンドのメンバーにプレゼント渡した奴がいるかと思えば、サインをもらおうとする奴もいるんだ…」

「信じらんなーい!」

「ばっかじゃないの…」



聞こえよがしのそんな言葉に、女の子は顔を真っ赤にして俯いた。
プレゼントのことは私達のことだよね…
やっぱり見られてたんだ…



「リク、サインお願いね。」

ママが立ち上がり、女の子の手からCDを取ってリクに手渡した。



「CLOWNはシュバルツの弟分だから、これからも応援してあげてね。」

ママの言葉に女の子は潤んだ目をして頷いた。
その時、シュバルツのメンバーが店に入って来て、歓声が上がった。



「みんな、遅いやないですか。」

「待たせたな。
……あれ?サイン?」

「せやねん。
僕らがあまりに人気ないもんやから、この子らが気ぃ遣こてサインもらいに来てくれたんやわ。」

「そっか、ありがとな!」

瑠威にそう言われて、女の子達は余計に真っ赤になって俯いた。



「じゃあ…まずは今日のライブを祝って、乾杯するか。
みんな、飲み物は揃ってるか?
って、俺たちのがないじゃん!」

他にもない人が店員さんにオーダーする。
しばらくして、ようやくみんなに飲み物が揃った。



「じゃあ、今日のライブの成功を祝して…
かんぱーい!」

「かんぱーい!!」

グラスを合わせる渇いた音が店内に広がった。