冷たくなって、きっとその風味も逃げた。


「なぁ」


グイッ――


手首を、掴まれたような感覚。


違う、これは“掴まれたような”ではなくて。


しっかりと力強く掴まれた、あたしの手首。


いつの間にかあたしに近寄っていた逢坂に思わず顔を上げて、あたしはその姿を確認する。


逢坂。


金髪の前髪の間から、その瞳があたしを見つめる。


そしてそのまま、逢坂は口を開いた。


「俺と、浮気しねぇ?」


「…は?」


――それは、あたしと逢坂が初めて会話してからほんの数分後に交わされた言葉だった。