あたしには分からない、考える余裕もない。 幸せの頂点から悲しみの底まで突き落とされた気持ちの変化に、心が追いついてくれない。 「知ってんのに付き合ってんのかよ」 足音が、する。 逢坂が教室に入ってきたのだとあたしは理解したけど、振り返る気にもならずただ俯いていた。 「…仕方ないじゃん、それでも好きなんだから」 平常心を装って発したあたしの言葉は、やっぱり震えていた。 さっき会ったばっかの初対面の男子生徒に、こんなこと教える筋合いもないのに。