両手をポケットに入れて。 ただ、しゃがみこむあたしを見下ろしている。 ――逢坂だった。 泣いているところ、見られた。 あたしはカーディガンの裾で慌てて涙を拭うと、すぐに立ち上がってまた背中を向けた。 「…知ってるよ」 精一杯振り絞ったその声は小さいボリュームでしか出せなくて、あたしはそのまま俯く。 逢坂が、何故あたしと駿が付き合っていることを知っているのかも。 何故、駿が浮気男だと知っているのかも。 何故、今あたしがここで泣いていることを知っているのかも――。