逢坂の引越しを知ったのはいきなりだったから、素敵なプレゼントは用意できなかったけど。 せめてこのクッキーだけでも渡せるならよかった。 ――心を込めて作った、世界にひとつだけの贈り物。 逢坂が笑ってくれますように。 心の中で何度もそう唱えながら、あたしは焼きあがったクッキーを家にあった可愛いラッピングの袋に入れ始める。 水色のギンガムチェック柄の袋は半透明で、中に入れたクッキーが嬉しそうにこちらを見つめていた。 あたしは逢坂の喜ぶ顔だけを想像していた。