見慣れた背中。


コツ、コツとチョークが黒板を走る音。


駿は問題を解き終わると、そっとチョークを置いて席へ戻ってくる。


「はい、楠森正解ね」


教師は赤色のチョークで、駿の導いた答えに大きく丸をつけた。


やっぱり、解いちゃうんだ。


周りの生徒からは歓声にも似た声がちらほらと聞こえてきて、その声に気づいた駿は少し笑っている。


そして――バッチリ目が合ってしまう、あたしと、駿。


だけどあたしは特に表情を変えずに、そのまま駿を見つめていた。