「ありがと」 あたたかい空気と握った手のひらから伝わる体温があたしと駿を包んで。 あたしたちは笑顔で頷きあってから、そっとその手を離した。 「じゃあ…あたし行くね」 笑顔のままそう声をかけて、あたしは歩き出した。 「バイバイ、凛夏」 バイバイ。 バイバイ、駿。 駿の切なくて優しい声が、背中を向けても聞こえていた。 まるでその声が、あたしの背中を押すようで。 ありがとう、駿。 あたしは振り返ることなく、駿より一足先に玄関へと向かった。