そう言ってあっかんべーと舌を出した逢坂は、あたしには返すまいとあたしの伸ばした手首をガッチリと掴んだ。
――こんな何気ない1シーンでも嬉しくなってしまう、単純なあたし。
一応は怒ったようにしているけど、その感情を隠しきれなくて…あたしは思わず少しだけ笑ってしまう。
結局あたしのその救出は失敗に終わり、卵焼きは逢坂の口の中に消え去ってしまった。
「ん、凛夏の母さんの作る卵焼き美味いな」
そう言って逢坂はあたしの手を離す。
それでいいのに、なんだか少し寂しくて。
ってこんなこと思うなんて…本当に逢坂のこと好きなんだよなぁ、あたし。

